著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

NHK「腐女子、うっかり」で好演 藤野涼子の際立つうまさ

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 今期ドラマの特徴のひとつに、同性愛者が登場する作品が多いことが挙げられる。「俺のスカート、どこ行った?」(日本テレビ系)、「きのう何食べた?」(テレビ東京系)、そして「腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。」(NHK)だ。

 安藤純(金子大地)は高校3年生。年上の恋人・佐々木誠(谷原章介)がいるゲイだが、同じクラスの三浦紗枝(藤野涼子)とつき合うことになる。紗枝はBL(ボーイズラブ)小説や漫画が好きな、いわゆる「腐女子」だ。しかし、純がゲイであることは知らない。純は佐々木と別れ、紗枝と向き合おうとするが、思うようにいかない。しかも、自分と同じゲイの親友が自殺してしまう。混乱した純は佐々木に助けを求め、彼とキスしているところを紗枝に見られてしまった……。

 このドラマ、自分がゲイであることに困惑しながら生きる少年の気持ちを丁寧に描いている。「好きなんだから仕方ない」という諦念。「なぜ生まれてきたのか」という自問。「居場所が欲しい」という願望。それらが混在し、純を揺さぶる。

 今回、金子の好演もさることながら、藤野のうまさが際立つ。複雑な心理や微妙なニュアンスを表現する力が半端じゃない。かつて映画「ソロモンの偽証」で発揮した天才少女ぶりは、やはり本物だ。この藤野を見るだけでも、十分モトが取れる一本になっている。

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