大阪万博の陰で住宅再建もままならず…能登半島地震の被災地からは怨嗟の声
大阪・関西万博が先週の日曜(13日)に開幕した。夢洲の会場内では、昨年に地震・豪雨災害に見舞われた能登半島の復興支援のため、輪島塗の巨大な地球儀が展示されている。一方、万博と能登半島をめぐっては、会場建設などのリソースを能登半島の復旧・復興に割くべきとの批判もあり、発災直後には国会で議論されるなど賛否が巻き起こった。復興が思うように進まぬ中、被災地の人々は万博の開幕に何を思うのか。
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災害の傷痕は、少しも癒えていないようだ。石川県珠洲市宝立町は昨年の元日、強い揺れに続き津波に襲われた。北東部の海沿いの地域は特に被害が甚大で多くの住宅が壊滅的な状態となった。
日刊ゲンダイ記者が今月2日に現地を訪れると、家屋の解体が進み、更地も見られる一方で、依然として倒壊したまま放置された住宅が少なくなかった。住民は、ほとんど残っておらず、街には波の音だけが響き渡っている。砂浜には車体の上半分が、ぐしゃぐしゃになった黒い乗用車が、撤去されないまま横たわっていた(写真)。
自宅が全壊し、現在は仮設住宅で暮らす地元住民の70代男性は、万博の開催について思うところがあるようだ。
■「復旧がもっと早く進んだのでは…」
「私は自宅跡に新しく家を建てることに決めました。しかし、地元の建設業者は人手が足りていないようで、瓦屋根さえもなかなか直してもらえないような状況。今年の初めに住宅を注文しましたが、いまだに着工のめどが立っていません。一日でも早く生活を再建したいという思いは皆同じだし、もし万博がなければもう少し早く復旧が進んだんじゃないか……。実際にどこまで影響があったのかは分かりませんが、どうしても万博に良い印象を持てません」
和倉温泉(七尾市)の夜の街でも、万博への不満は聞かれた。多くの旅館が甚大なダメージを受け、21ある旅館のうち今月18日時点で営業再開できているのは5軒にとどまっている。温泉街は午後10時を過ぎる頃には人通りがほとんどなくなり、旅館の明かりが消えた街は薄暗く感じた。
中心地近くで飲食店を経営する30代男性は、スナックでグラスを傾けながら苦しい現状をこう明かす。
「私の店も地震でヒビが入り、半年ほど店を閉めざるを得ませんでした。復旧にもかなりの費用がかかり、再開したときには借金が400万~500万円ほどにまで膨れ上がっていた。温泉街を訪れる客も戻っておらず、震源地から離れたこの辺りでさえも、復興からはほど遠いのが現状です」