海老蔵ラスト弁慶、松也大出世…令和元年に相応しい團菊祭
平成最初の襲名は1990(平成2)年5月の團菊祭での尾上松助と松也(当時5歳)父子だった。松助は新派役者の子で、二代目松緑の弟子となり歌舞伎界に入ったが、脇役専門だった。襲名披露公演では、普段は主役クラスが演じる御所五郎蔵をつとめられたが、2005年に若くして亡くなったので、最初で最後となった。その役を、松也は襲名でもないのに、つとめている。しかも松助が出た時は「五條坂仲ノ町」の場だけだったが、今回は「奥座敷」「廓内夜更」までを通した。いかに松也が「異例の出世」をしたかが分かる。御曹司でもなく、脇役出身なのに、本人の力でここまできたのだ。
海老蔵最後の弁慶、丑之助初舞台、菊之助初の娘道成寺、松也大出世と、時代の変わり目を象徴する興行となっている。
(作家・中川右介)