海老蔵ラスト弁慶、松也大出世…令和元年に相応しい團菊祭

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 歌舞伎座は團菊祭で令和の開幕となった。

 来年、團十郎襲名が決まった市川海老蔵にとっては、「海老蔵ファイナル」へのカウントダウンが始まっており、昼の部「勧進帳」は〈海老蔵として最後の弁慶〉。富樫は尾上松緑、義経は尾上菊之助で、この配役は海老蔵がブレークした〈伝説の1999年1月の浅草歌舞伎〉以来、20年ぶり。海老蔵にとって「海老蔵」にどう決着をつけるかの自問自答の一年の始まりだ。私が見た日は、内向的というか情のある弁慶だった。

 夜の部は、菊之助の5歳の長男が七代目尾上丑之助を襲名して「絵本牛若丸」で初舞台。祝幕を宮崎駿が描いたのでも話題。この芝居では弁慶は出てこないはずだったが、宮崎が祝幕に弁慶も描いてしまったため、菊之助が弁慶で出ることになった。丑之助扮する牛若丸の門出を祝うという、芝居としては他愛ないものだが、尾上菊五郎、中村吉右衛門という2人の祖父をはじめオールスターキャストの楽しい一幕となっている。

 続いて菊之助の「京鹿子娘道成寺」。弁慶のあとに、白拍子花子を演じるのは前代未聞だろう。菊之助の花子はひたすら美しい。久しぶりに客席からも「きれいねー」のひそひそ声があちこちから聞こえた。美しさでは玉三郎以来だろう。歌舞伎座では玉三郎と「二人道成寺」はやっているが、ひとりでは初めて。菊之助も次の段階へ向かっている。最後が「御所五郎蔵」で、尾上松也の五郎蔵に、坂東彦三郎の星影土右衛門、中村梅枝の皐月、尾上右近の逢州と菊五郎劇団若手が揃う。今月は他の演目が舞踊や様式的なものなので、演劇として最もドラマのある芝居となった。

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