巳之助と児太郎“平成代名残絵巻”で印象付けた世代交代宣言
平成最後の月、市川海老蔵は自主公演で全国各地をまわり、松本白鸚・幸四郎は襲名披露の巡業、中村芝翫・尾上松緑・片岡愛之助らは名古屋御園座、中村勘九郎・中村七之助・市川中車・中村扇雀らは四国のこんぴら大歌舞伎に出ている。
東京の歌舞伎座は大幹部が勢揃いしての最後の大歌舞伎なのだが、客の入りは悪い。とくに昼の部は常連が来る3階席がすいている。役者の名前だけでは客は来ない。
昼の部最初はこの月のために作られた「平成代名残絵巻(おさまるみよなごりのえまき)」。代替わりにちなんで、平安時代末期、源平合戦の時代を舞台にした舞踊劇。福助以下、それなりに豪華な顔ぶれで、短いながらもストーリー性があり、見どころも多い。もっと長くして、本格的な芝居にしてもいいくらいだ。何も期待しないで見に行ったので、儲けた気分になった。最後は巳之助と児太郎が出て、次の時代は彼らのものだと印象付ける。深読みすると、世代交代宣言でもある。
「新版歌祭文」は「野崎村」の場はよく上演されるが、今回はその前日譚にあたる「座摩社」の場が約40年ぶりに上演され、初めて見た。喜劇調の芝居で、中村又五郎がうまく演じている。だが見に行った日は、観客を笑わせるシーンなのに客席は静まり返り、完全にギャグが空回りしていた。何が問題なのだろう。