なぜ人気?興収4億円超の映画「すみっコぐらし」実況中継
“レ・ミゼ超え”の切ないストーリーに思わずホロリの声
キャラ萌えや人気タレントの声だけがヒットの要因ならば、ファミリー向けの良作止まりが関の山だろう。だが、特筆すべきは別にある。ストーリーの奥深さだ。
居場所を探すひとりぼっちのひよこと、すみっコたちの冒険というストーリーは、劇中に出てくる「じぶんさがし」という言葉が象徴するように、大人の目で見るとそこに「他者からの承認」や「自己実現」といったテーマが見えてくる。そして、その物語はただ明るく楽しいだけではなく、辛く切ない現実も含まれているのだ。
そもそも、すみっコという存在自体、食べてもらえなかったとんかつの切れ端やエビフライの尻尾、カタツムリのふりをしているナメクジなど、少なからず負の要素も抱えている。「こうなりたかった(けど、こうなれない)」そんなすみっコたちとひよこの姿は、現代を生きる大人にとって少なからず自分と重なるところもあるのではないだろうか。
最初はそれこそペットや子供を見守るようなテンションだった観客の大人たちも、徐々に真剣になっていくのが肌で感じられるようだった。上映後に目を赤くして帰っていく人もチラホラと見られ、記者の後ろにいた女性も「レ・ミゼラブルより泣けた」と同行者に称賛しているのが印象的だった。
まったくもって、隅に置けない一作。仕事に私生活に頑張る大人こそ劇場で観る価値は、ある。
(取材・文=キタハラセイヤ)