ジャズ・バイオリニスト牧山純子さんを勇気づけた小澤征爾氏の言葉
「ジャズもクラシックも続けた方がいい」
バイオリンでジャズを演奏して注目を集めている牧山純子さん。新境地に至るまで多くの出会いがあったが、米国留学時代に後押ししてくれたのは“世界のオザワ”だった。この写真はその貴重な一枚。
武蔵野音大を卒業、短期間パリで学んだ時期も含めて、クラシック以外は全く知らないで育ちました。
そんな私とジャズの出合いは、バイオリニストのイツァーク・パールマンの「サイド・バイ・サイド」というCDを聴いた時です。ニューヨークのジュリアード音楽院の先生で映画「シンドラーのリスト」の演奏もしている方です。パールマンが好きで幼少からCDを集めていたのですが、CDに聴いたことがない曲が収められていた。「マック・ザ・ナイフ」「ミスティ」といった、ジャズのスタンダードナンバーです。
弾いているのは私の知らないジャズ・ピアニストのオスカー・ピーターソン。音楽が流れだした時は雷に打たれたような感じでしたね。これをやりたい、ジャズの先生につきたいとその瞬間に思いました。
調べたら、ポピュラー音楽を教えているボストンのバークリー音楽大学に、バイオリンなど弦楽器科があることがわかったので留学を決めました。2002年です。それまでは作曲家が作った楽譜を忠実に気持ちをこめながら演奏するクラシックだったのが、即興でも演奏するジャズに飛び込んだわけです。最初はどうしていいかわかりませんでしたね。
当時、ボストン交響楽団には1973年から常任指揮者を務めている小澤征爾さんがいたので、小澤さんが指揮するコンサートに出かけたんですね。日本人はほとんどいませんから、同士意識もあって終演後、楽屋にお邪魔してご挨拶することができました。日本でなら“世界のオザワ”に直接、お話などできませんが、外国だからできたことだと思います。
小澤さんのお住まいは私と同じ成城でした。小澤さんは父と同い年、息子さんの征悦さんも学校は別だけど同じカトリック系に通っていて同級生、よく行く地元のおそば屋さんも同じ……。今から考えると、私が身近に感じていたから、思い切ってお話しすることができたのかもしれません。