ジャズ・バイオリニスト牧山純子さんを勇気づけた小澤征爾氏の言葉
ご飯に行こうと誘ってくれたボストン留学時代
小澤さんには、子供の時からバイオリンをやっているけれども、パールマンのCDを聴いてジャズにも興味があって留学しているとか、クラシックの先生はご存じないですかとお話しして、ご紹介いただきました。
一緒にレストランで食事をしたり、ご自宅にうかがった時にはスコアブック(楽譜)を見て、お話をうかがったりも。
日本食のレストランに行った時は天ぷらそばを頼むのですが、「成城の店で食べたいね」と言ってらっしゃいましたね。
道を歩いている時に車に乗っていた小澤さんが窓を開けて「純子!」と手を振ってくれたこともあります。一緒にいた友人に「小澤征爾と純子はどんな関係なの?」なんて言われて。栄養をつけたくなったらご飯に行こう、音楽会ならいつでもいいよと言ってくれた小澤さんはボストンの父親みたいなものです。
ボストンには2年弱ほどいました。父が脳梗塞になって途中から日本と行ったり来たりの生活になり、クラシックとジャズの両方は大変になってきたので、ジャズに専念しようといったんは決意しました。でも、小澤さんは「ボストン交響楽団は夏はボストン・ポップスといってポップスをやるオーケストラになる。両方を弾こうと思って勉強しているのは間違っていないから、両方を続けた方がいい。絶対ジャンルの壁もなくなるから」とアドバイスされた時は本当に勇気づけられ、頑張ろうと思いました。“世界のオザワ”の印籠、お墨付きをもらったみたいなものですかね(笑い)。
小澤さんはその後、ボストン交響楽団を辞めてウィーン国立歌劇場音楽監督に就任しました。ボストンを離れてからはお会いできていませんが、私はあの言葉を信じて、ジャズ・バイオリニストを続けています。本当に感謝しています。これは当時の貴重な一枚です。
(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)
■4月8日、新アルバム「アレグリア」リリース
キングレコード移籍第1弾のアルバムを米ロサンゼルスで初めて録音。エレクトリック・バイオリンも駆使した意欲作。