一生懸命やる若手と枯れたおじいさん…それが寄席の世界
今月から新宿末広亭と浅草演芸ホールが再開した。一之輔は21日から末広亭の昼席に出演している。来月からは他の寄席も始まるが、休業中、落語ファンはどう過ごしていたのだろうか。
「週に1度は寄席や落語会に行ってた人が、ひと月行かないと禁断症状が出るみたいです。でも、半月もたつと、別に行かなくても平気になってくる。一方、落語家は禁断症状なんかすぐに治まって、落語をやらなくても平気になる。芸人はもともと怠け者ですから。双方がこの状態だと怖いですよね」
寄席が再開してよかったのでは?
「ひさしぶりに楽屋で会った先輩の師匠が、『いざ再開となると、寄席に来るのがおっくうだね』と言ってました(笑い)。その気持ち、なんとなくわかります。長い夏休みが終わって、新学期の初日に登校した生徒みたいなもんですから」
近年、「一之輔のドッサリまわるぜ」というタイトルで独演会の全国ツアーをやっているが、3月以後、ほとんどの公演が中止になった(7月4日の有楽町よみうりホールでの独演会は実施)。
「僕としては、できれば寄席とホールの割合を五分五分にしたい。自分を目当てに来てくれる独演会のお客はありがたいのですが、あんまり前のめりで聴かれると、へそ曲がりなんで、『自分はそれほどのもんじゃない』と思うんです。その点、寄席は僕が目当てのお客ばかりじゃないですから、けられる(受けない)こともある。それでバランスが保てるわけで」