著者のコラム一覧
一雫ライオン作家

1973年、東京都生まれ。明治大学政治経済学部2部中退。俳優活動を経て、35歳のときに演劇ユニット「東京深夜舞台」結成を機に脚本家に転身。主な脚本作品に、映画「TAP 完全なる飼育」「サブイボマスク」、東野圭吾原作「パラレルワールド・ラブストーリー」など。2017年に家族愛を描いた「ダー・天使」(集英社)で小説家デビューし、翌年「スノーマン」出版。最新作は幻冬舎から出版予定。

「後に残る言葉」は相手に誤解も傷も与える危険をはらむ

公開日: 更新日:

 まず彼に送った言葉、アドバイスとやらは「感動させたいんです!」などという、むしずの走る言葉はおやめになったらということと、「恥をかく覚悟はあるのかい?」ということだった。あと、経験も。痛いとか苛立つとか、そこらへんも必要かもと伝えてもらった。と、いよいよ青年がわたくしと、じかに連絡を取りたいと言っているとY編集者からきかされ、これでもそれなりに忙しいし、新作小説の締め切りは大いに遅れているし、それなのに麦焼酎は飲むし大好きな横浜ベイスターズの試合も見るし2人の幼子を時々笑わせたりもせねばならぬのでやはりこれ、なかなか忙しいのである。と、青年がわたしのLINEアドレスを求めているという。

 ご勘弁願う。「ピロリン」とLINEの着信音が鳴るたびに、心優しき編集者様からの「執筆はいかがでございましょうか」という愛と脅迫と怒りのこもったメッセージではと怯えるわたしは、極力LINEはやりたくない。なので「いちど会うか、もしくは電話で」と伝えてもらうと「ライオンさんもお忙しいと思いますので、メールアドレスを教えてください」と言ってきたという。

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