「ストレス」嫌いな言葉。使わないようにしている。
が、もちろんストレスが嫌で環境を変える方もいるし、それも生き方のひとつだ。
わたしの知り合いにGさんという男性がいる。大学を卒業し30年、芸能事務所でマネジャーとして働いていた。そのGさんが数年前、突然「マネジャーを辞めた」と連絡してきた。
「今、どうしている」と尋ねると、「都内某所に来い」という。
指定された場所に行くと、Gさんはうなぎの寝床みたいな狭い坪数の店で、法被を着てたこ焼きを焼いていた。
決して立地のいい場所ではないのに。10人ほどが行列までつくっている。器用にピックでたこ焼きを転がしながら、満面の笑みを浮かべGさんはまくし立てた。
「ライオン! おれはもうタレントは懲り懲りだ! あいつら、デビューしたての時は仕事くれ仕事くれって頼んできといて、ちょっと売れりゃ、やれこの仕事イヤ、休みくれ、揚げ句にゃスタジオ入ってるのに、“飼ってる犬に餌あげてきたか忘れた”とか言って、ぎゃーぎゃー泣き出して楽屋から出てこねえんだぞ! 餌なんて知るか! もうそんなストレス地獄はごめんだ! おれはな、前からたこ焼き屋をやるのが夢だったんだ。それにたこ焼きはいいぞ! 焼いても焼いても文句言わねえんだから!」