村西とおる「くじけそうになったら這いつくばる私を見よ」
不道徳を圧殺してはダメ。もっと寛容に
失業率増加で活力が失われていく日本。一方で、出生数は85万人を切るほど低下し、少子化はますます進む。
「将来の歴史の本で『東洋の島国ジャパンは新型コロナウイルスで萎縮して閉じこもっちゃって、AV見てセンズリばっかりこいて、パンツ脱ぐのを忘れて少子化問題で自滅した』って書かれちゃいますよ。私は昭和23年生まれの団塊世代です。我々の父母は焼け野原で明日をも知れない状況の中、ハメまくり、中出ししまくって子供が生まれたわけですよ。日本がここまで大きく繁栄してきたのは将来が不安でも人類と日本の未来に希望を託しイタしまくった誉れ高き我々のスケベ心による人口増加です。それが日本経済のベースであり、国力の源泉でした。そういうエネルギッシュな活力を忘れてはいけない」
東京五輪についても監督には自説がある。将来の人たちのためにも日本で開催するべきだと語る。
「五輪もやったらいいんですよ。五輪をコロナ感染でやめました、なんてことになったら将来の人から大笑いされますよ。将来の子孫に、コロナ禍においてもきちんと統制して、東京五輪をやったという実績を残すべきです。もちろん国民のマインドが上がりますし、経済的な効果もあります。針小棒大で大騒ぎしてテレビの影響を受けていたらダメです。五輪はぜひ開催してほしい」
20年は誹謗中傷があふれるSNSで多くの芸能人が叩かれまくった。監督はもっと寛容さが必要だと力説する。
「不倫は個人の問題。大騒ぎしているのは人間のジェラシーです。SNSで『天誅だ!』と叩いて話題を提供してくれる人を圧殺してしまうのはダメ。寛容も必要です。社会正義を求めて杓子定規なことばかりいうと、屁でもない楽しくない作品ばかりになってしまう。私なんて借金が50億円、前科7犯、執行猶予の価値紊乱のスペシャリストですよ。それでも女房とイタしているところを大勢にご開帳しながら必死に仕事していたら『全裸監督』(ネットフリックスで19年配信)になった。そして世界190カ国の人々の琴線に触れる物語になったんですから」
AV業界もコロナで春から仕事が激減して厳しい状況に追い込まれた。それでもAVの明かりは消えない。
「私のドキュメンタリー映画『M/村西とおる狂熱の日々』はコロナの影響で、映画館での公開が途中で中断されてしまいました。それで12月にDVDを発売することになりました。コロナ禍でもエロスの世界はニーズがありますから、ネット配信の部分も20%増で、ある意味明るいです。最近は『寝盗られもの』がいい。人妻や女房の妹とか、社会的ステータスのある奥さまが性に耽溺していく。非日常のファンタジーですよ。憧れの品のいい奥さまを陵辱するファンタジーはゾクゾクする、人間のオスの『征服欲を満たす』本性です」
コロナ禍で苦しい日々にくじけそうになったら、「底辺を這いつくばって生きている私を思い出してほしい」とエールを送る。
「人間は絶望した時、底辺を泥まみれになって生きている人間を見れば、まだまだ俺のほうがマシだと思っていただけるでしょう。俺はもはやこれまでだと思っても大丈夫。『死にたくなったら村西を見ろ!』です。ずっとずっと下に私がいるんだということを思い出してほしい。『まだまだ俺だってやれる』と元気が出ますよ」
(取材・文=浦上優)
▽むらにし・とおる 1948年、福島県生まれ。バーテン、英会話教材のセールスマン、テレビゲームリリース業を経て、裏本制作で「裏本の帝王」と呼ばれ、その後、AV監督として一世を風靡(ふうび)。これまで3000本のAVを制作した「AV界の帝王」。