著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<27>子どもの頃、遊び場は「投げ込み寺」遊女の墓場だった

公開日: 更新日:

 これは、三ノ輪(台東区)の実家の近くの浄閑寺で撮った写真なんだ。彼岸花だけどね。浄閑寺は吉原の遊女の「投げ込み寺」。そこが子どものときの遊び場だったんだよ。寺には吉原総霊塔っていうのがあって、身寄りのないまま死んだ吉原の遊女たちを葬ってたところなんだ。その総霊塔を騎兵隊の砦にしたり、木をいっぱい縄で吊って、空中にハンモックみたいなのを作ってターザンごっこをやったり、西部劇ごっことかをやったり、そこに乗って遊んでたんだよ。(浄閑寺は、安政の大地震〔1855年〕で亡くなった、たくさんの新吉原の遊女たちの遺体が投げ込むように葬られたことから、いつしか「投げ込み寺」と呼ばれるようになった。関東大震災、東京大空襲で焼死した遊女たちもこの寺に葬られており、その数は約2万5千人といわれる。花又花酔の川柳に、「生まれては苦界、死しては浄閑寺」と詠まれ、新吉原総霊塔が建立された)

■遊女の匂いもある…。“死とエロス”が染み付いてるんだ

 浄閑寺に、うちの墓もあるんだよ。お彼岸になると墓に花がたむけられる。彼岸が終わると枯れる。その枯れかかってるのがよくてね、それを撮りに白バックになる板を持っていって撮ったんだ。墓守が捨てる前に、白バックで全部撮った。1000個のお墓をバックにして撮ったのが、この写真なんだよ。枯れかけの彼岸花を、日が暮れるまで撮り続けた。なんかこう、魅かれちゃうんだよね。もう夢中になって撮ってたね、何千回も。

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