「もっと広めなあかん」浪曲消滅への危機感から定期公演を
大阪公演で得た売り上げを使ってまで東京でやってくれるのは、浪曲ファンにはありがたい話だ。
「それが去年からコロナ禍でできんようになって、お金を何に使おうかと恵子ちゃんとも相談したところ、ラジオの枠を買って、浪曲を広める番組を作ろうと、ラジオ大阪で『浪花ともあれ浪曲ざんまい』という番組を始め、2年目に入りました。そんな折に芸術祭の大賞を頂いて、弾みがついたと喜んでます。浪曲は残しておかんとね」
それは会長としての責任感なのか。
「芸人はたいてい自分が社長の個人事業主です。社長が死んだら会社がなくなる。でも、会長となれば、自分のことだけ考えてるわけにもいかん。やはり業界全体のことを考えんと。うちのおやっさん(初代)も7年会長をやってたけど、自分のことだけやから、案の定、死んだとたんに浪曲人気が衰えたということがありました。それではあかんのですわ。私が会長を12年やってるのは後継者がいないからなんです」
幸枝若の表情が引き締まった。(つづく)
(聞き手・吉川潮)