「国立演芸場始まって以来の大掛かりなマジックと言われました」
「いや、推してもらっただけでありがたいです。ラスベガスでしたら普通にやっているネタで、たいしたイリュージョンじゃないのですが、国立演芸場の狭い舞台にオートバイを出したことで、国立始まって以来の大掛かりなマジックと言われました」
規則にうるさい国立演芸場の搬入口から、バイクを入れたことに驚いたものだ。
「2年後、池袋の東京芸術劇場での公演で、舞台に乗用車を出して消したのを覚えてますか?」
もちろん覚えている。バイクより大きい乗用車ごと伸が消えたのだ。驚いたのなんの。
「何か目玉がないと、お客さまに申し訳ないじゃないですか。そこでオープンカーを購入し、改造して舞台に出しました。消えた瞬間、お客さまが呆然としちゃって拍手がない。『あれ? 受けなかったかな』と心配になったら、少し間をおいて盛大な拍手が起こったのでホッとしました。あの時の車、一度も乗らないまま下取りに出しちゃいました。大変な損害です(笑い)。それでもお客さまが喜んでくれたから、お金をかけた甲斐があったというものです」(つづく)