沢村忠は“時代の寵児”に…女王・美空ひばりとも親しく付き合うようになった
そんな超多忙なハードスケジュールをこなしていた沢村忠だが、この頃たびたび夜の銀座で目撃されるようになっていた。デビューシングル「いかす街だぜ」を作詞した山口洋子の経営するクラブ「姫」である。山口洋子とは盟友関係にあった作曲家の平尾昌晃の証言もある。
「『姫』の店内には中2階があってそこはカフェになっていた。洋子ちゃんはそのカフェで作家の先生と話したり、打ち合わせで使っていて、僕もよくそこで仕事をしたものだけど、あるとき、沢村君が下のホールにいるのが見えた。『あ“キックの鬼”がいる。戦う男もこういう場では柔和だなあ』なんて思ったもんだよ」
沢村忠の眼前に、華やかな世界が広がっていた。=つづく