<66>野崎幸助さんの死後、テレビで流れた「おじい」の動画
「かんぽの宿」の宴会場で「イブを偲ぶ会」を開いた翌日、2018年5月11日の早朝、私は野崎幸助さんの会社「アプリコ」にいた。この日の夕方に都内で用事があり戻る予定だったが、昨晩の宴会で、朝10時から熊野本宮大社の近くで差し押さえ執行が行われると聞き、時間の許す限り見学することにしたのだ。
「昨晩はありがとうね。ヨッシーの言う通りに偲ぶ会をやって本当に良かったですよ」
机で新聞に目を通していた社長が私を見て、頬を緩めた。いつもはスーツの社長が珍しく半そでのピンク色のポロシャツにチノパンだった。
「社長もご機嫌でしたよね。あれ? どうしたんですか、その傷は?」
開いたポロシャツの襟元から赤いミミズ腫れが何本も見えた。
「昨晩は早貴ちゃんと激しいバトルだったんですか?」
これが見当違いだったことはすぐ後で分かる。
「差し押さえの書類を見せてくれませんか?」