<72>野崎幸助さんは午後6時半には死んでいた? 早貴被告は遺体に一度も触れず
そのうち早貴被告が起きてリビングに顔を出した。すっぴんで寝間着代わりの緑色のワンピースをまとっていた。
「大変だったなあ」
早貴被告がこっくりとうなずいた。彼女も入れて再び昨晩のことを繰り返し聞いたが、引っかかったことがあった。彼女は亡くなった社長の体に一度も触っていなかったことが分かったからだ。「社長、社長」と抱きかかえるようにして体を揺すったのも心臓マッサージをしたのも大下さんで、早貴被告は電話で救急隊員のアドバイスを伝えていただけだった。(つづく)