<72>野崎幸助さんは午後6時半には死んでいた? 早貴被告は遺体に一度も触れず
「酒類販売業は縮小するより仕方ないかもしれないなあ。だけど、早貴ちゃんを社長にして従業員が頑張れば何とかなるだろうし、不動産も管理するセクションをつくって販売すればいいんやないかな」
マコやんが言う。私もそれが妥当だとうなずいた。
酒類販売は白浜の大規模ホテル数軒と契約していたし、三重県のホテルにも酒を配達していた。北は和歌山市から有田や御坊、そして田辺は無論のこと、南の串本や勝浦あたりの紀伊半島一帯に酒を販売していたのだから、町の酒屋さんとは規模が違う。酒類販売を手放すことになっても、ホテルと結んでいる営業権を他社に有償で譲渡することも可能だ。
また、不動産業というのは八百屋で大根を売っているわけではないから、右から左にポンポン売れるということはないのが常識である。廃屋になった誰も住んでいない物件もドン・ファンは多数持っていたから、廃屋を除いたほうが高く売れるし、更地にしなければ買い叩かれるのは目に見えている。それを防ぐ意味でも不動産管理部門をつくってタイミングを見ながら売っていくのが妥当だと、私も思っていた。