<71>オレを写真家にしてくれたのは陽子 四六時中、彼女を撮り続けた
ロッキングチェアーに座ってビールを飲む陽子。ふたりだけの幸福な時間。こういう写真がいいんだよね。結婚して、まだ(台東区)三ノ輪の実家の近くに住んでた頃、持ち物もない狭い部屋で、日曜日、陽の当たる部屋で陽子が缶ビール。なんにもなくても幸福感がある。なにげなくて単純な日常の写真だけど、いい笑顔なんだよね。写真を撮られることにも慣れてるから、まったく気負いがない顔をしてて。愛があるとき、人はこんなに幸せな顔になるんだな、って思うんだ。
いい笑顔、いい顔になる一番いい方法は、ちょっとキザだけどさ、人を愛することなんじゃないの? しかも血の流れてる愛だよ。情が通ってるやつ。通い合ってる喜びがあると、それは必ず顔に出るんだよ。
今はインターネットやメールで他人とコミュニケーションしたり、なんでもかんでもケータイで連絡したりするだろう? そうすることで、いつだってつながってる、って感じがあるのかもしんないけど、やっぱり生身の人間と触れ合ってる方がいいと思うよ。血や肉でつながれない関係は、やっぱり“死”に近いから、それじゃあ生き生きとはならない。いい顔にならない、ってことだね。