<71>オレを写真家にしてくれたのは陽子 四六時中、彼女を撮り続けた
ほんのちょっとのことで、顔は変わるんだ。ほんのちょっとのいいことなら、ほんのちょっと顔はよくなる。だからそれが連続的に続いていけば、いい顔は作られていくんじゃないかなぁ。そんなに大きないいことなんて、降ってきやしないんだよ。でもささやかないいこと、ささやかな愛は、どんな人にだってある。それを感じなきゃ、感じる力がないと効き目はないからね。
■90年1月27日、陽子は逝ってしまった
オレはよく、「陽子がオレを写真家にしてくれた」って言ってるんだけど、オレの写真人生は、陽子との出会いから始まったんだ。四六時中カメラを離さないで、彼女を撮り続けた。
結婚をして、新婚旅行に行って、その旅行を撮影したのが『センチメンタルな旅』。新婚旅行の写真を自費出版することを陽子が許してくれなかったら、オレは“写真家”にはなれなかった(1971年に私家版写真集『センチメンタルな旅』を自費出版。<陽子>連載10.11に掲載)。
90年1月27日、陽子は逝ってしまった。オレを写真家にしてくれたのは陽子。陽子と出会い、陽子との結婚から「センチメンタルな旅」は始まった。新婚旅行のこともそうだけど、人生そのものがセンチで、それは今も続いている。
(構成=内田真由美)