<78>R.フランクに下駄をプレゼント 息子みたいに可愛がってくれたんだよ
ロバート・フランク(2)
ロバート・フランクはね、オレが前に住んでた“ウィンザースラム豪徳寺”に遊びに来てくれたんだよ(ロバート・フランクは1924年スイス生まれ、写真家を志して23歳で渡米。写真界の巨匠と称され、世代を超えて支持され続ける。2019年9月、94歳で死去。“ウィンザースラム豪徳寺”は荒木が1982年末から30年間暮らした世田谷区豪徳寺のマンション。マンションの広いバルコニーは荒木の「写場」となり、多くの写真が生まれた)。
フランクが、なぜかメジャーをね、お土産に持ってきてくれたんだ。そのとき、バルコニーで撮った写真があるよ。じゃあ、ロバート・フランクの距離で撮ろうって、ふざけて距離を測って撮ったりしてね。オレはフランクに下駄をプレゼントしたんだ。その下駄を履いたフランクを撮ってるんだよ。フランクの足元にコップが転がってるだろ。彼の足元に、わざとビールをこぼしたんだよ。画面がおもしろくなるだろ。
わざとビールをこぼして…
それと、猫だか犬だかわからないんだけど、フランク作のオブジェも持ってきてくれたね。重たいんだよ。それをお土産にって持ってきてくれて、「自分が作ったんだ」なんて言うから、泣かされちゃうわけだよ。ロバート・フランクは、オレを息子みたいに可愛がってくれたんだよ。
フランクがさ、おもしろい写真を送ってきてくれたこともあるね。テレビ画面に写っている野球の荒木大輔(当時ヤクルトスワローズ)の後ろ姿の写真でね。名前が「荒木」だから、ユニフォームの背中の名前が「ARAKI」だろ。背番号が「11」でさ。荒木大輔がバットを持ったユニフォームの後ろ姿が「ARAKI 11」なんだよ。フランクは、テレビを観てて、あっ、アラキだって思ってくれたんだね。「ナンバーワン」だって。いつも「アラキ、ナンバーワン」って言ってくれてさ、嬉しいよ。
(構成=内田真由美)