著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<87>頂点を目指してとかじゃないんだ、頂点なんてないんだからさ

公開日: 更新日:

2022年の今、現在(1)

 オレの写真はおしゃべりなんだよ。だから、見る人が自由に見てくれればいいんだ。オレは誤解されてもいいって言ってるんだよ。見る人が決めるんだからね。オレは提出しているだけだから。

 オレにとっては、今やってるコトなんだよ。過去のコトじゃなくてね。今を出したい。今、こういうことをやってるってね。今は「楽園」だね(自分の部屋で花とフィギュア、人形を組み合わせて撮影する「楽園」のシリーズを近年、撮り続けている)。

 いつも、今やってるコトを出していきたいって思ってるんだ。ほら、ヘンな例だけどさ、野球の大リーグの大谷翔平もさ、ホームラン100号打っても、頂点じゃないんだよ。通過点だっていうことで続けてるじゃない。通過点なんだよね。

オレは、まだ殺されたくないんだよ

 たいがいさ、過去のことになるじゃない。例えばさ、(瀬戸内)寂聴さんが亡くなると、これまでの名作や回顧の扱いするじゃない。オレは、まだ殺されたくないんだよ。今もまだ、こんだけ出してね、ザワザワしてるんだ。いいかげんなことやっている、まだ、いいかげんなコトを続けてるって。

 それは、オレがいいかげんだからというより、自分がわからないからだよ。決めたくないんだ。もしかしたら、文学者とかは自分自身を追求するじゃない? そんな気分があるからじゃないかな。だから、ずっと撮り続けている。頂点を目指してとかじゃないんだ、頂点なんてないんだからさ。

 でもね、オレが撮ってきた写真、自分でも「おぉ~」と思うのあるからね(笑)。そうなんだよ、だから今の気分としてはさ、世界の写真ね、みんな素晴らしいけど、どんな写真が好きかって聞かれたら、アタシの自分の写真が一番いいんだよ。今ね、楽しいし、ワクワクすんの。まだね、見てワクワクするんだから、写真は死んでない。ひとつのブツになってない、まださ。アタシの写真は死んでない。

(構成=内田真由美)

※個展「荒木経惟 花姫」 渋谷区神宮前・アートスペースAMで開催中(6月6日まで)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  2. 2

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  3. 3

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    大河ドラマ「べらぼう」の制作現場に密着したNHK「100カメ」の舞台裏

  1. 6

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  2. 7

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  3. 8

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  4. 9

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  5. 10

    トランプ関税への無策に「本気の姿勢を見せろ!」高市早苗氏が石破政権に“啖呵”を切った裏事情