教団に家族を破壊されてきた41歳は、ロストゼネレーションの極北だ
それより、教団に家族を破壊されてきた41歳の犯人の過去を思うと哀れでならない。母親が入信して家がめちゃくちゃになっても、自活のために自衛隊に入り、挙げ句に自殺未遂までして保険金を家族に残そうとしたなんて聞くとなおさら、哀れだ。彼はロストゼネレーションの極北だ。母親が破産した02年から20年間、就職氷河期をやり過ごし、母親に苦しみもがいてきたのだ。好きこのんで道を外れた無頼者でもなく、寄る辺ない者になるしかなかったのだ。不安や不満をぶつける相手もいなく、誰も助けてくれない。孤立感の最たるものだ。彼こそ、既に何年も前から死に始めていたんだろう。
もう半世紀前……あの狙撃現場の奥の今のターミナルほど広くないバス停から、遅刻した朝は奈良交通バスに飛び乗り、高校に通ったものだ。現在の駅ビルやショッピングモールはなく、小さな店が並ぶ通りだった。3年生の秋の文化祭のために8ミリ映画を作ったのを思い出す。大学受験体制と極めて権威主義的な校風に耐えているオナニー好きな男子生徒が「正義の味方」と名乗る仮面の男に狙われ、無人の廊下で撲殺されるという内容で、映研の顧問教師が上映許可しなかった。「おう上等だ、だったらゲリラ上映だ」と物理教室を勝手に使って生徒らに見せたのが、我が第1作「奇談・オレたちに明日はない」(70年)、製作費2万円の作品だ。学歴社会のベルトコンベヤーに乗せられてる自分に気づけ! 大学に飼われて社会の部品になるな! そんなアジテーション映画だった。