六平直政さん「オレの髪がフサフサだった頃、唐十郎さんと長男・義丹と伊豆で撮った1枚は…」
六平直政さん(俳優・68歳)
コワモテにドラ声、迫力満点の俳優・六平直政さん。超個性的なバイプレーヤーとして、最近では映画「太陽とボレロ」などで活躍している。そんな六平さんの俳優活動の原点は舞台。劇作家・唐十郎率いる劇団「状況劇場」だった。
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オレは進学校の都立国立高校から武蔵野美術大学、同大学院に進んで彫刻を専攻する真面目な学生だった。ところが、当時、付き合っていた女の子が唐十郎の大ファンだっていうんで、「状況劇場」の芝居を一緒に見に行ったら、面白くてね。
ある日、新聞に「状況劇場」の求人広告が出ていたので、舞台美術をやったらどうかなと思って応募したら合格。それから役者として舞台に立つようになって、ここまできたんだから人生わからない(笑)。
■唐さんはとにかくケチ
でも、唐さんはとにかくケチ。オレは「状況劇場」に10年近く在籍したんだけど、その間にもらったお金は20万円もなかったんだから。
文句を言いたくても唐さんは座長でこっちは下っ端。「嫌なら出てけ」と言われるだけだから何も言えなかった(笑)。
仕方なく、ドブさらいから飲食店のボーイから何百種類ものアルバイトをしてしのいだわけだけど、それでも劇団を離れなかったのは唐さんの書く素晴らしい(台)本で芝居ができたから。それだけが理由だね。
その唐さんと看板女優だった李麗仙さんの長男が、俳優で作家の大鶴義丹。劇団に入った時、オレは23歳で義丹はまだ9歳だったから、釣りに連れて行ったりしたよ。これは唐さんと3人で伊豆に行って、唐さんがオレと義丹を撮った写真。オレの髪もまだフサフサだった頃(笑)。この写真では海風に吹かれてクルクルしてるけど、オレの髪はもともとストレートなんだよ。
義丹は頭がよくて本を理解する能力がすごい。それにオヤジを反面教師にしてケチじゃないから好きなんだ。ヤツが若い頃、やんちゃして六本木のバーの壁に穴を開けちゃったことがあって、オレがその穴を後で埋めるために行ったこともあったな(笑)。
その坊やが今じゃ54歳で、オレと一緒に芝居してるんだから不思議だよな。6月に花園神社の境内に張ったテントで、唐さんが自身のことを書いた「下谷万年町物語」で共演したんだ。オレはオカマ役で、義丹はヤクザ役。そうそうたる俳優らが見に来たよ……豊川悦司、寺島しのぶ、岸部一徳、宮沢りえ、森田剛、波乃久里子、渡辺えり、せんだみつお、岸本加世子、余貴美子……チケットがなかなか取れなかったんだから。