松山ケンイチや阿部サダヲが主演…映画界“孤独死”作品が急増の謎解き
家族総出からパーソナルに
このように90年代までは人が集うセレモニーとしての葬式が描かれたが、2000年代に入って状況が変わる。滝田洋二郎監督の「おくりびと」(08年)は本木雅弘演じる納棺師を描いた作品だが、最後に彼は子供の頃に生き別れて孤独死した父親の納棺を、自ら手掛けることになる。また岡田将生、榮倉奈々主演の瀬々敬久監督作「アントキノイノチ」(11年)は、主に孤独死した人のものを取り扱う「遺品整理業」の人々を描いた作品だ。近年の映画では死はセレモニーではなく、“亡くなる当人だけのパーソナルな出来事”になってきた。今年公開された早川千絵監督、倍賞千恵子主演の「PLAN75」は75歳になると自分の生死を選べる近未来の日本を描いていて、これなどは一人暮らしの高齢者を主人公にした、究極の孤独死映画であろう。
その一方で、11月に公開される中江裕司監督、沢田研二主演の「土を喰らう十二カ月」には、自分の死と向きあって毎日を生きていく老作家の日常が描かれる。言ってみれば自ら孤独を選んだ人間の死生観がつづられるわけで、孤独をどう捉えるかはその人次第。孤独死映画は現代の死をみつめる上で、実用的な作品にもなっているのだ。
(映画ライター・金澤誠)