「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」から考える 映画界で昭和レトロブームが続く背景
一方で水木が戦時中、南方戦線で上官から玉砕を迫られた部隊の生き残りというのは、水木しげる本人のエピソードを引用していて、鬼太郎の父と母が幽霊族の末裔というのは「ゲゲゲの鬼太郎」の世界観を踏襲したもの。ただ鬼太郎の父が持っている夫婦の写真を見ると、鬼太郎の母はかなりの美人で、どこか「四谷怪談」の“お岩さん”を思わせる風貌だった原作の母とは違う。それにはちゃんと理由があることも、後半で明かされる。
いってみればこの作品は、水木しげる本人と鬼太郎の世界に横溝正史のおどろおどろしいミステリーの雰囲気をミックスさせた、昭和の色合いが濃いホラーミステリーなのである。
レトロな昭和の喫茶店や80年代を中心にした昭和の歌謡曲が若い世代に“萌え”のアイテムとして見直されている昨今、映画でも昭和を舞台にした作品が続々登場。現在大ヒット中の「ゴジラ-1.0」は昭和20年から23年が舞台だし、黒柳徹子が自らの子ども時代をつづったベストセラー小説「窓ぎわのトットちゃん」のアニメーション映画も、12月8日から公開される。