故・寺田農さんが貫いた「やりたいことを一心不乱に」…晩年は中高年世代に生き方指南
肺がんのため、このほど81歳で亡くなった寺田農さんは名バイプレーヤーであるばかりか、若手や中高年世代の生き方指南でも知られていた。
映画関係では、香月秀之監督はこう振り返った。
「寺田さんとは数本一緒に仕事をさせていただきました。もう10年以上前のことです。覚えているのは印鑑屋の店主役をやっていただいた時のこと。印鑑を手にいろいろな紙に押印しながらセリフを言うシーンで、そのしぐさを何度も練習しアドリブを入れたりもされていた。本当に芝居熱心な人だなと思いました」
■東海大文学部の特任教授
そんな寺田さんの背中を見て育った俳優ら関係者は大勢いるのではないか、と言った。実際そうなのだろう。東海大文学部の特任教授として教壇に立ち、演劇入門と映画を語りつつ、若い学生たちを励ましていたことで知られる。晩年は中高年世代の背中も押していたという。
「オンラインでの勉強会で、50代のサラリーマン男性から、第二の人生を、そしてプライベートを充実させるにはと問われ、親身に答えたりしていました。仕事だ私生活だと分けず、何であれ、人生で本当にやりたいことを第一に、一心不乱にやること。そうしないと面白くないでしょう、というアドバイスを送っていました。後に調べたところ、寺田さんご自身が、そういう生き方を貫かれた方だったのですね」(IT関係者)
所属会社によると、寺田さんは「最後まで仕事を続けながら、諦めることなく希望を持って、治療に励んでまいりました」そうだ。桜の開花を待たずの旅立ちとなってしまったが、故人、遺族の意向により、近親者のみで営まれた家族葬はとてもしめやかなものだったようだ。