客観性と愛情を両立 絶望を経て培ったノブコブ徳井の諦観を含んだ批評眼
しかし、入学して間もなくの夏ごろ、のちにピースを組む2人が桁違いに面白いことに気づき、早々に「同じ時期にお笑いを始めて、もうこんなに面白いやつらがいるのか」と才能の差を感じ、「ダウンタウンになれない絶望」を味わった(「敗北からの芸人論」)。
そんな徳井が注目されたきっかけのひとつは、その“奇行”だった。10~11年に放送された「㈱世界衝撃映像社」(フジテレビ系)の部族ロケで、徳井は食用の幼虫を、相方の吉村がセオリー通り嫌がるリアクションをする横で、無表情のまま、スナック菓子を食べるようにボリボリと食べたり、さらっと5年前に結婚していたことを明かしたりした。相方にも言っていなかったのだ(その後の離婚、再婚も)。どこか、感情の起伏がない不可解な言動は異質だった。
彼は前出の自著で「良いことだろうと悪いことだろうと、世の中のこと全ては真に受けちゃいけない」とつづっている。絶望を経て培った諦観を含んだ人生観があるから、一歩引いて芸人やバラエティー番組を見て、客観性と愛情が両立した分析ができるに違いない。