クリストファー・ノーランと野田秀樹 ふたりは鳴き声を異にする〈炭鉱のカナリア〉どうしなのかもしれない
■舞台や映画を観るとき、可能ならば事前にその内容を極力知りたくない
そんなモヤモヤをしばし忘れようと、その夜は親しく付き合っている俳優の李そじんさんが出演するNODA・MAP『正三角関係』を、池袋の東京芸術劇場まで妻と観に行った。
ぼくは舞台や映画を観るとき、可能ならば事前にその内容を極力知りたくない。それどころか、知らずに当日を迎えるための努力さえしている。今回も作・演出が野田秀樹であることはもちろん承知とはいえ、ほかに得ていた事前情報は「松本潤、永山瑛太、長澤まさみという人気者3人が主演」程度。上演回も「妻とスケジュールが合いそうなのは金曜の夜かな」くらいのノリで選んだに過ぎない。
先述の3名がカラマツ(唐松)という姓の3兄弟を演じていること、設定が第二次世界大戦終盤の長崎であることは、実際に観てはじめて知った。カラマツ家? カラマツ族? カラマツゾク? なるほどこれはドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』の本歌取りなのか。いかにも野田秀樹だなあと遅い気づきを得て、物語世界におもむろに入っていく。