クリストファー・ノーランと野田秀樹 ふたりは鳴き声を異にする〈炭鉱のカナリア〉どうしなのかもしれない
終演後、李そじんさんと面会した。アンサンブルの一員として素晴らしい動きをみせた彼女の好演ぶりを讃えたあと、「『正三角関係』は『オッペンハイマー』への回答なの?」と訊ねる。そじんさんは穏やかな笑みを浮かべて「あの映画を観てからだとこのタイミングの上演は間に合いませんよ」とやわらかく否定した。そりゃそうか。「でも、稽古中に野田さんが映画についてお話しされたことはありましたけどね」。なるほど。『オッペンハイマー』を監督したクリストファー・ノーランと野田秀樹を結びつける発想なんて今までなかったけれど、ふたりは鳴き声を異にする〈炭鉱のカナリア〉どうしなのかもしれない。
『正三角関係』はファットマン投下の第一目標地だった小倉で9月に上演される。そのあと大阪公演を挟み、10月末にはノーラン監督の故郷ロンドンでの公演が控える。『オッペンハイマー』は広島と長崎の惨状をあえて描くことなく、その表現の姿勢は賛否両論を呼んだ。誰かノーランに『正三角関係』のチケットを送付してくれないかな。お願い、エラい人!