“女子プロレス界の聖子ちゃん”立野記代さんはドリンクバー経営…“3禁”のはずが二十歳で大失恋も

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「1時間後に1000万持ってきたら辞めさせてやる」

「私はプロレスだけをやりたかったから、とにかく嫌で……。でも、全女が決めたことに私たちはNOが言えない。絶対服従だったので『やりたくないです!』って反発しても、『もう決まったことだからやりなさい』と。それで二十歳のとき、芸能もプロレスも何もかも嫌になっちゃった。理由? 大失恋です」

 全女といえば酒・たばこ・男の“3禁”のルールが……。

「3禁を破って(笑)、3年ほど少し年上で穏やかな一般職の方と付き合ってました。全国巡業や芸能活動で忙しいなか時間をつくっていたけど、『好きな人ができた』ってフラれた。毎日泣いて、試合ができなくなっちゃったから、俊マネジャー(松永俊国元専務)に『辞めます』って言ったら、『1時間後に1000万持ってきたら辞めさせてやる』って返されて。そんなお金はないから続けます、みたいな(笑)。そしたらアメリカのWWF(現WWE)からオファーがあったので、自分を変えられるチャンスかもと思って行きました」

 86年の秋にJBエンジェルスとして渡米。世界最大の男女混合プロレス団体で、日本人女子プロレスラーとして初めてWWF世界女子タッグ王座を戴冠し、メインイベントに出場。その功績が称えられて、別の連盟が制定した「女子プロレス2025年度版」ホール・オブ・フェームを受賞した。

「アメリカでは男子レスラーが大きくてマッチョだから気づかなかったけど、トータル20キロ近く太ったり。週給制を初めて経験して、どこの会場も満員だったから、ギャラプラスのボーナスとして毎週1000ドルもらえたり。あのまま続けてたら億万長者になれたよ(笑)。楽しい女子プロ人生でした。これからの夢? このまま長くお店を続けられればいいな」

 斉藤さんは16年に、食道がんのため48歳の若さで逝去した。

「人って死んじゃうんだって思いました。治療が大変だったのを見てたから、もし自分に何かが見つかったらあんなにつらいんだと思うと怖くて、あれから健康診断を受けてない。でも、みんなに勧められてるから、今年は受けようと思ってます。彼女のためにも、店を守らなきゃいけない。日々健康で、平和で幸せに過ごしながらね」

 薬指には指輪がキラリと光っているが。

「これは、金を持ってたお父さんの形見を指輪にしてるだけ。結婚はしてませんよ。ここまで独りできちゃったから、いまさら人に気を使って生活するのは嫌かな。あっ、でも『縁があればぜひ!』って言っておきます(笑)」

(取材・文=伊藤雅奈子)

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