【朝ドラおむすびのツボ!】演技派・緒形直人の泣ける墓前シーン。「ポケベルが鳴らなくて」の緒形拳が重なった!
第11週「就職って何なん?」#51
【朝ドラのツボ!】
こども防災訓練の打ち上げがヘアサロンヨネダで行われ、さくら商店街や結(橋本環奈)が通う栄養専門学校、そして米田家の面々が集まり苦労をねぎらう。
そこへ、歩(仲里依紗)の付き人だった佐々木佑馬(一ノ瀬ワタル)が突然サングラス姿で現れ、驚く一同。そんな佑馬に歩は、まだロサンゼルスにいる予定じゃなかったのかと問う。
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【本日のツボ】
付き人佑馬のルー大柴化
たしか、さくら商店街の集会所があったように記憶しているのですが、打ち上げはヘアサロンヨネダでやるんだーと思っていたら、佑馬がやって来ました。
なるほど、集会所で打ち上げをやっていたら、佑馬とすれ違うわけで、ヘアサロンヨネダでやったほうが、時間と場所の節約になりますものね、と変なところで感心。
ロス帰りの佑馬、「LosAngelsのDavidがアユさんじゃないとBusinessをしないって、聞くear haveしてくれないんっスよ」とルー大柴化。歩もそうでしたが、ロス帰りはみんなルー化するところは笑いポイントなのでしょうか。
にしても、<聞くear have>=聞く耳を持たないって、なんだか微妙です。<藪からスティック>=藪から棒や<寝耳にウォーター>=寝耳に水、<言わぬがフラワー>=言わぬが花…というように、一瞬なんのことかと思うけど、すぐに答えがわかってジワるのがルー語の醍醐味なのに…。
安易にルー語を真似て笑いを取ろうというのがいただけません。どうせなら、ルーさんご本人に監修してもらったほうがよかったのでは…。
ナベさんに「ポケベルが鳴らなくて」の緒形拳が重なった!
それよりも、ナベさん(緒形直人)です。またしても結の驚異の記憶力がナベさんの心を動かしました。「うちのお父ちゃんならどこに行っても大丈夫やもん。日本一の靴職人なんやもん」という真紀ちゃん(大島美優)の言葉を伝えることで、ナベさんの心が氷解。一晩でギャル靴を作り上げるという奇跡を起こしたのです。
真紀ちゃんの墓の前で、完成したギャル靴を歩に渡すナベさん。歩に「めっちゃいい」と言われ、「ホンマか」と嬉しそうでした。この墓前での2人のやり取りは緒形直人と仲里依紗、本来の芝居ができていてとてもいいシーンになっていました。
そこでふと思い出したのが、1993年のドラマ「ポケベルが鳴らなくて」のことです。今でいう不倫ドラマで、娘の友達と不倫する主人公のサラリーマンを緒形拳が演じていたのです。
正直いって、大河ドラマの主役を二度も演じるなど日本を代表する名俳優の緒形拳ともあろうお方が、なぜこんな俗なドラマに…と思ったものですが、ドラマ史に残るせつないラブストーリーに創り上げ、どんな作品でも手を抜かない役者魂を見せつけられた気がしました。
緒形があまりにも素晴らしかったせいで、彼の家庭を壊す不倫相手役の裕木奈江は日本全国の女性たちの敵として嫌われることになったほどですから。
そのDNAを受け継いだ緒形直人、ともすれば、アニメのような「おむすび」の中で、しっかりと役になりきり、孤高のナベさんを演じていました。
お見事です。仮にこれからギャルちゃんたちに囲まれてニヤけたとしても許します。
(桧山珠美/TVコラムニスト)