「五葉のまつり」今村祥吾著
「五葉のまつり」今村祥吾著
「戦」といえば先駆けや敵の首を挙げることなどに目が向きがちだが、実際は兵糧の調達や運搬、武器弾薬の手配、戦地になる村や寺への根回しなどの陰の仕事が大半を占めている。
信長が本能寺で討たれた後に素早く明智を下した秀吉は、その重要性に早くから気づいていた。天下統一後の世に必要な事業を行うにあたり、こうした裏方の仕事がさらに重要になるため、秀吉はこれらにたけた奉行衆を集め、なかでも浅野長政、前田玄以、石田三成、増田長盛、長束正家の五奉行を重用した。本書は、この五奉行が、秀吉の大事業に立ち向かう姿を描いた歴史お仕事巨編。
物語では、北野大茶会、刀狩り、太閤検地、大瓜畑遊び、醍醐の花見という秀吉が行った大事業に、どんな意図があり、どんな難題があり、どんな方策で達成に至ったのかを五奉行の目線から語られる。司法担当の浅野、宗教・朝廷担当の前田、行政担当の石田、土木担当の増田、財政担当の長束は、それぞれ得意分野を生かし、時にはぶつかり、秀吉の「よきにはからえ」を解決する。
樹木の花とならずも葉のように働く姿に、応援したくなる。
(新潮社 2530円)