「M-1」2位! バッテリィズ・エースの愛され力。“アホ”が殺伐とした現代に必要とされるワケ

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コクハク

令和ロマンに敗れるも、大注目のバッテリィズ

 もはや年末の風物詩となった『M-1グランプリ』(ABC・テレビ朝日系/以下M-1)が今年も12月22日に開催され、チャンピオンに昨年と同様・令和ロマンが輝きました。前人未到の2連覇の偉業を達成する一方で、2位になったのは、全国的にはまだまだ無名のバッテリィズ。

 大阪予選から勝ち上がってきた彼らの漫才、特にボケのエースさんのキャラクターは、「何も考えずに笑える」「新しいバカがやってきた」と、初見の視聴者のハートを鷲づかみにしました。早くも仕事のオファーが殺到しているといいます。

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実はイケメン! 純粋無垢なエースの愛され力

 バッテリィズは大阪のよしもと漫才劇場を中心に活躍する、エースさん(30歳)と寺家さん(34歳)からなるコンビ。純粋で無知なエースさんに、寺家さんが様々なことを解説し、それに対し無垢でアホな反応をするしゃべくり漫才を得意としています。

 今回のM-1ファーストラウンドでは7番手で登場し、「名前書いたら受かる高校に名前書き忘れて落ちた」などおバカエピソードで観客の心を掴んだ後は、「細そうすぎる」「自転と公転さえわかれば」などというフレーズもはまり、4分間でエースさんの愛らしさが全て詰め込まれた漫才でした。

 華やかな見た目のエースさんについて、視聴者からは俳優の「渡辺大知さんにそっくり」「笑顔が佐藤隆太さんを思わせる」「峯田和伸?」という声もあるほど。身長も182cmと高く、芸風同様、陽のオーラをまとった彼に、心を奪われる視聴者が男女問わず大量発生したようです。

息子のように見守りたくなる

 エースさんは、大阪の西成区出身。所属している草野球チームではその名の通り“エース”であり、本名は角 拳都(かど けんと)というのもまるで少年漫画の主人公のよう。漫画・ワンピースが好きということですが、そのキャラが名前の由来ということを否定しています。

 決勝進出者発表でも少年のような無邪気さは変わらず。重々しい雰囲気の中でコンビ名が次々発表され、みな他に配慮して静かに嬉しさを噛みしめる中、エースさんだけは「おおお、やったあ!」と声をあげ、その喜びを爆発させていました。

 また、決勝進出会見でも優勝賞金の使い道として「親にあげますよ。親にあげたらよろこぶんで!」とまっすぐに即答。親世代の心を打ちぬいたのは言うまでもありません。

 その明るさや純粋さは、多くの先輩たちも気にかけているようで、マヂカルラブリーの村上さんは、件の決勝進出会見で「かわいい♡」と目を細め、決勝後に行われた打ち上げ配信でも「悲しい思いはしてほしくない。嫌な仕事は断って」などと親のような心配をしていました。

 その横にいた渋谷凪咲さんも「(バッテリィズのネタ中)審査員の方が子供を見るような目になっていた」と評するなど、M-1の4分間で見ていた全ての人の息子にエースさんがなっていたような気がします。

アホは癒しを与え、殺伐とした世の中を救う

 最近のM-1は、複雑な構成や伏線回収、ち密な言葉遊びを駆使した漫才が評価されがちで、令和ロマンのような大会を分析しつくしたコンビが優勝し、いわば漫才がスポーツのように競技化している現状があります。

 バッテリィズの漫才は技巧的な漫才というよりは、エースさんのキャラとアホさで笑わせる、老若男女誰にでもわかりやすい面白さがあります。

 審査員のオードリー若林さんも「小難しい漫才が増えてくる時代の中で、ワクワクするバカが現れたなと。日本を明るくしてくれそう」と評価。アンタッチャブルの柴田さんも「こんなクリティカルなアホは初めて見た」と絶賛していました。どこかヘキサゴンの羞恥心メンバーを思わせる部分もあるので、もし審査員の中に島田紳助さんがいたのなら、優勝を勝ち取っていたかも…と余計な想像をしてしまいます。

 2021年に優勝した錦鯉もそうですが、明るいバカは周りの人を笑顔にする効果があり、漫才のネタ以上に演者の人柄も愛される二重の効果を生みます。人柄が愛されるということは、これから東京のバラエティの平場で活躍していくにあたって大きな強みになっていくでしょう。

エースのボケに学ぶ、大切なこと

 バッテリィズのエースさんのアホと錦鯉のまさのりさんのアホが違うのは、若さ以上にそのピュアさ。現代人が忘れかけていた大事なことに気づかせてくれる要素です。

「(ソクラテスを)呼んでこい、楽しませたるわ! 俺が」「生きるのに意味なんていらんねん」そんな言葉に泣かされたという哲学を学ぶXユーザーの投稿もありました。「もう誰も死なんといて」「悩みなんて寝たらしまいやから」「(親孝行より)生きとるだけでええねん」

 M-1のネタ中に叫ばれたエースさんの発言は、日めくりカレンダーにしたいくらい、聞いたものの心の中に刻まれてしまうほどの“くるもの”があります(錦鯉の意味のないバカバカしさの極みも味があって大好きです)。

 指摘・反論されたら素直に謝り、偉人の名言以上にいいことを吐き捨てるように言って「もうええわ」で漫才を終える潔さも、気持ちがいい。また、アホ全開のエースさんを包み込む、寺家さんの父親のような優しさあふれるやりとりにも胸が熱くなりました。

俳優としても開花するか?

 一昨年のさや香、昨年のヤーレンズなど、優勝せずとも爪痕を残しテレビ出演が増えたコンビは数多くいますが、今年はバッテリィズが彼らに続くでしょう。

 個人的に、エースさんは存在だけで華があるので、今後は役者としても成功しそうな予感がします。その名の通り、2025年のエースとしてバッテリィズの活躍を期待します。

(小政りょう/ライター)

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