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荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<2>写真は親父を見ていて覚えた!下駄職人なのに撮影上手

公開日: 更新日:

知らず知らずのうちにオレは「写真をやるぞ」と

 親父はね、根っからの職人だったんだ。下駄のね。木を削って台にするところから、鼻緒すげて下駄にするところまで全部やってた。下駄の形をしたデカイ看板も自分で作ったんだよ。その看板が絵じゃなくて、立体だったところがすごいんだ。まわりを銅板で囲んでね。それを戦争の時に供出で持ってかれちゃった。それが悔しくてね、戦後、また作るんだって言って2代目を作った。下駄の看板は親父の作品なんだよね。

 親父が家の4畳半ぐらいのところを、もっと狭かったかな、改造して暗室にして、現像を定着までやってるのを、いつも見ててね、手伝わせてくれた。写真の撮り方も習ったっていうより、親父を見ていて覚えた。現像もね、親父がやっていたのを見よう見真似で覚えたんだよ。

 親父は人をおだてるのがうまくてさ、「ノブはスナップがうまい」とかいって、撮らせてくれてね。そんな親父のおだてで、知らず知らずのうちに「写真やるぞ」って。写真の先生というのはいないんだけど、親父が先生をやってくれてたんだよな。

(構成=内田真由美)

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