<2>写真は親父を見ていて覚えた!下駄職人なのに撮影上手
知らず知らずのうちにオレは「写真をやるぞ」と
親父はね、根っからの職人だったんだ。下駄のね。木を削って台にするところから、鼻緒すげて下駄にするところまで全部やってた。下駄の形をしたデカイ看板も自分で作ったんだよ。その看板が絵じゃなくて、立体だったところがすごいんだ。まわりを銅板で囲んでね。それを戦争の時に供出で持ってかれちゃった。それが悔しくてね、戦後、また作るんだって言って2代目を作った。下駄の看板は親父の作品なんだよね。
親父が家の4畳半ぐらいのところを、もっと狭かったかな、改造して暗室にして、現像を定着までやってるのを、いつも見ててね、手伝わせてくれた。写真の撮り方も習ったっていうより、親父を見ていて覚えた。現像もね、親父がやっていたのを見よう見真似で覚えたんだよ。
親父は人をおだてるのがうまくてさ、「ノブはスナップがうまい」とかいって、撮らせてくれてね。そんな親父のおだてで、知らず知らずのうちに「写真やるぞ」って。写真の先生というのはいないんだけど、親父が先生をやってくれてたんだよな。
(構成=内田真由美)