作家・紗倉まなさん 実の祖母をモデルにした意欲作『うつせみ』に込めた思い

公開日: 更新日:

「作中でばあちゃんには『綺麗になりたいっていうよりも、みんなと同じになりたいってことなのよね』と悟りめいたことを言わせました。整形そのものは個人の努力ですが、社会全体で見たときには別の考え方をする必要があると思ったからです。美を語る上で“個性”という多様性を考えるキーワードが必ず出てきますが、私たちの社会は個性を受け入れられているのでしょうか。“量産型の顔”という言葉もよくSNSで話題になります。ルッキズムと多様性という2つの価値観が交差するのが整形なんじゃないかと思います」

 本書の視座は美醜の問題にとどまらない。辰子の生まれ育った千葉県某所は、水運の要所として豊かな河川が人々の生活を潤していたが、今では〈搾り取られるだけ取られた後の、おこぼれみたいな川〉に。ばあちゃんの記憶にあるかつての写真館はトランクルームへ、草履屋は駐車場へと殺風景に様変わりした。移ろう都市の姿にも整形が重なる。

「なんでもキレイに効率よくするために世の中は変化しているなと感じています。それはもしかしたら、整形をめぐる議論も都市の変容も同じことなのかもしれません。生きやすくなっているようで、実は、生きづらさを抱えなければいけない時代。整形や美醜についての直接の当事者でなくても、同じメッセージが響くこともあるかと期待しています」

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希を徹底解剖する!掛け値なしの評価は? あまり知られていない私生活は?

  2. 2

    大阪万博の目玉 344億円の巨大木造リングはほぼフィンランド産…「日本の森林再生のため」の嘘っぱち

  3. 3

    「65歳からは、お金の心配をやめなさい」荻原博子著

  4. 4

    佐々木朗希「通訳なし」で気になる英語力…《山本由伸より話せる説》浮上のまさか

  5. 5

    タモリが「歌う日露戦争」と評した圧巻の紅白歌合戦パフォーマンス

  1. 6

    高額療養費問題が参院選を直撃か…自民が噴出「立憲の凍結案のまざるを得ない」に透ける保身

  2. 7

    大阪万博パビリオン建設は“24時間体制”に…元請けの「3月中には完成させろ!」で危惧される突貫工事の過酷労働

  3. 8

    西武・西口監督が明かす「歴史的貧打線」の原因、チーム再建、意気込み、期待

  4. 9

    松本若菜に「小芝風花の二の舞い」の声も…フジテレビ“2作連続主演”で休めない“稼ぎ頭”のジレンマ

  5. 10

    大阪万博「歯抜け開幕」ますます現実味…海外パビリオン完成たった6カ国、当日券導入“助け舟”の皮肉