作家・紗倉まなさん 実の祖母をモデルにした意欲作『うつせみ』に込めた思い
答えのない“美”を追求するという痛みを象徴するシーンがある。グラマーな体形である辰子は電車などでの舐めるような視線に悩み、スレンダーな同期・みぞれは摂食障害に苦しむ。それぞれの苦しみを理解しているはずなのに互いの体形を羨望してしまう。一方でばあちゃんは、はち切れそうなほどの胸を手に入れるため、年金を使ってまでしてローンを組む。
「この10年くらいで、整形の社会的なイメージは大きく変わりました。ファッションやメークのようにカジュアルになったんです。技術の向上によって身体的にも経済的にもコストが軽減。SNSでは整形の経過を投稿するアカウントも出てくるほど身近な存在になりました。それでも、手術には痛みが伴うし、理想を追い求めるには精神的な痛みもつきまといます。個人的には、整形は個人の努力だと肯定的にとらえています」
辰子が所属する事務所の女性マネジャーは整形を「売れるための手段」として考え、辰子の母親は〈女の子は顔が命。傷がつくのはダメ〉と口にする。
十人十色の価値観が随所にちりばめられ、美を追求する人々の群像劇の様相を呈す。そんな状況をばあちゃんが一言で言い表す。