名郷直樹
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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

論文と現実のギャップ…「サブグループ分析」で目の前の個人に近い人で解析

公開日: 更新日:

 サブグループ分析について紹介すると、これまでも問題にしてきたように、「日本人のデータが見たい」という人が多くなる。しかし、その疑問はいささか的が外れている。そもそも重要なのは日本人に限った解析というより、目の前の人にあった解析であるか否かである。その1つの手法として今回紹介したサブグループ分析という方法がある。

 ただ、そこには統計学的に多くの問題があり、その解釈には慎重を要する。サブグループ分析から明確な結論を導き出すのは危険で、そこで仮説が証明されたと考えるのではなく、新たな仮説が提示されたと考えるのが妥当である。

 つまり、この研究から「サージカルマスクと布マスクに差はない」と結論付けるのも、「高齢者でマスクの効果が高い」というのも、新たな仮説として考慮したほうが統計学的には妥当であるということである。しかし、それはあくまで統計学的なことであって、個別の人にどうするかは、この結果を踏まえて個別に相談するほかない。

(注)偶然4つのうちの1つで有意水準5%未満で差を検出してしまう確率のこと。有意差が出ない確率は1つの検定では1-0.05=0.95であるが、これが4つ検定して1つも有意差が出ない確率になると(0.95)⁴である。この補集合が少なくとも1つは有意差が出てしまう確率になるので、「1-(0.95)⁴=0.19」と計算される。

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