「その気がなくて…」ヘルパーの色仕掛けをシャットアウトした男性の賢い対応
午前9時45分が、池端史郎さんのお迎え時刻だ。
その時刻に、僕が運転するワンボックスカーを家の前に止める。添乗員の小池さんが車から降り、玄関のベルを鳴らす。2、3分して池端さんは、男性ホームヘルパーに付き添われて車に乗り込む。
「おはようございます、ゆっくり眠れましたか」「はい、眠れました」「朝ごはんは食べましたか」「どうにか」……。そのほか食欲についてなど健康状態を確認してデイサービス施設に向かう。
ホームヘルパーとは、ひとりでは日常生活が不自由な高齢者を介助する仕事だ。朝、自宅に訪問して起床させ、着替え、朝食、トイレの世話をしてデイサービスに送り出すのが基本で、それに昼食や夕食の用意、洗濯、部屋の掃除などの時間単位の追加が付くこともある。
池端さんは87歳、奥さんに先立たれ一人暮らし。結婚して家を出た娘さんは、夫の仕事の関係で海外在住。聞いた話では、池端さんは苦労して働きながら大学に通い、薬剤師の資格を取り、都内に薬局を開業して成功したとか。自宅は70坪、ほかにも何件かの不動産を持つ資産家だとか。