社内環境の改善ツールと注目の「サンクスカード」って何? 導入2社に活性化事例を聞いた
社員の満足度が上がると料理の品質も向上
前出のフレスカは岡山や広島などで30の飲食店を展開。石井嘉明専務は「弊社の経営は、顧客満足度を上げることです」と語る。メディアは料理に関心を向けるが、同社は料理以上に顧客へのサービスを重視する。そのためには従業員の満足度を上げることが不可欠。店舗ごとに分断されているため、アルバイトを含めた全従業員への企業理念の浸透を目的としてサンクスギフトを導入した。
「従業員の満足度が上がると、キッチンやホールを含めて店舗全体の雰囲気がよくなります。そうするとホール担当は接客サービスを改善したり、キッチン担当は肉のカットを安定させたり、盛り付けをキレイにしたりして料理のクオリティーが上がるのです。『おいしかった』と料理をお召し上がりいただけるお客さまの姿をイメージして仕事をするのか、目の前の流れ作業として仕事をするのかでは、仕事の満足度も質もまったく異なります。ですから当社は従業員の満足度を上げることを特に重視するのです。昨今バイトテロが報じられますが、おそらく従業員としての満足度が低いことも要因でしょう」(石井氏)
従業員の満足度が高くて会社への好感度も高ければ、社員やアルバイトが知人や友人を誘うリファラル採用(口コミ採用)につながる。
同社のリファラル採用は、年間200人以上で、店舗によってはまったく広告費を使わずにアルバイト採用ができているところもあるという。その点が評価され、「働きがいのある会社ランキング2024」で6度目の小規模部門ベストカンパニー賞を受賞した。
■勤務中の投稿もOK、社員の見える化に貢献
アートでは、全国3ブロックに所属する従業員2400人にサンクスギフトを導入。利用料は1人当たり毎月定額課金でトータルすると少なくないコストだが、山田一寿・東京ブロック長が言う。
「スマホひとつで手軽に社員全員がお互いの顔が見えて、タイムリーな情報共有が可能になったことがメリットです」
これまでブロック内のチーム間では、情報共有ができていたが、ブロック外ではできていなかった。引っ越し会社の仕事柄、社員は毎日、新しい現場を飛び回るため、横のつながりが生まれにくかった。
「『サンクスギフト』導入後は、社員の活動が投稿され、これまでつながらなかった人の姿が見えるようになりました」(山田氏)
同社では就業時間中のSNSは全面的に禁止。顧客の写真がSNSなどに投稿されたり、社内情報の漏洩を防ぐためだ。しかし、サンクスギフトに限っては、就業時間中でも完全に自由。グルメや旅行などプライベートな投稿もOKだという。
「若手社員はSNSを日常的に使うのが当たり前です。それが勤務時間中に可能になった効果はかなり大きい」(山田氏) 同社は毎年、北大阪支店で「引越技術コンテスト」を開催。全国から1000人近い有志が集まるビッグイベント。このような「楽しむ」社風も、「サンクスギフト」を使って広げたいそうだ。
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こうしてみると、サンクスカードのメリットは計り知れない。まだ利用していない企業も、導入を検討してはどうか。