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内田正治タクシードライバー

1951年埼玉県生まれ。大学卒業後、家業の日用品、雑貨の卸会社の専務に。しかし、50歳のときに会社は倒産。妻とも離婚。両親を養うためにタクシードライバーに。1日300キロ走行の日々がはじまった。「タクシードライバーぐるぐる日記」(三五館シンシャ)がベストセラーに。

(29)幸運な出会いと一抹の寂しさ…乗車料金2万円以上の乗客は、高校の同級生だった

公開日: 更新日:

 私はこの先輩ドライバーの教え通りつねに「手を上げたお客を乗せる」を基本にしていた。3年ほど前のこと。土曜日の夜、銀座でワンメーターのお客を降ろし、「回送」にして会社に戻ろうとしていた。すると「いいですか?」と初老の男性。私はドアを開けた。すると「埼玉の久喜市まで」とうれしいご用命だ。私の生まれ育った街に近い。2万円以上の料金が見込める。「東北道の久喜インターでよろしいでしょうか」と尋ねると「そう。それでお願いします」。高速道路、とくに東北道は混雑もなくスムーズに走れる。なにより料金も出る。上客中の上客である。私の思いを察したのか、同世代と思わしき男性客はほほ笑みながら話し出した。

「今日は卒業して初めて高校の同窓会に参加したんだ」とうれしそうにいう。「皆さん変わっていたでしょう」と私。すると機嫌よさそうに「じつは当時のある体験を話したんだ」と話しはじめた。乗車時間は1時間くらいになりそうだ。

「えっ、どんな体験ですか、お聞かせいただければ」

 私は退屈しのぎに話を聞こうと合いの手を入れる。すると、そんな言葉を待っていたかのように話し出す。職業は開業医だという。

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