元テレ東アナ赤平大さん 発達障害の息子と続けた努力と習慣 “塾ナシ”麻布合格の秘訣はギフテッドにあらず
受験まであと2カ月しかない中で取り組んだ「たった一つのこと」
しかも、2カ月しか時間がない中で取った戦略が、「記述力をひたすら高める練習」に労力を集中させたことだ。
一般的な中学受験の常識からはかけ離れたやり方だが、これは、赤平さんが2017年に早大大学院商科研究科でMBA(経営学博士)を取得した際に学んだ「両利きの経営」「仮説思考」「差別化集中戦略」などの知見から導き出されたものだった。
「読み書きや知識の暗記、計算などの学習は一切捨てて、書くことだけに集中させました。もともと書くことだけでなく、記憶した情報から必要なものを整理して書き出す作業を最も苦手としていたからです。具体的には、山川出版社の『詳説・日本史』の要約を時間と字数制限を設けて、正解不正解は問わずひたすら取り組ませました。次にとりかかったのが、過去問の国語の記述問題だけをひたすら解くことでした。これも丸つけはしませんでした」
■“塾ナシ”でも合格できた本当の理由
こうした作業を短期間で繰り返すことで、鬼門だった記述問題も少しずつ解けるようになり、過去問の得点は合格最低点を上回り、徐々に手ごたえを感じていったという。
しかし、勝因は直前2カ月の追い込みだけでなく、これまで本人の特性に合わせて塾に通わず、自宅学習を積み重ねるというルーティーンが大きかったと分析する。そして、お子さんの名門中進学は決していい大学に入学して、いい会社に就職するためのものではないという。
「麻布中に進学したことで学びの幅が広がり、息子は少しずつ成長しています。しかし、これがゴールではありません。麻布に入学したことが目的ではなく、彼が自分のペースで成長し、自立して生きていけるようサポートを続けていくつもりです」
大切なのは、個々の特性を理解しつつ、社会の中で居場所や役割を見つける手助けをすることだと話す。
「言動が少し人と違っていたり、空気が読めない行動をしていたりというケースは、発達障害と診断されていない人でも当てはまることだと思います。会社であれば、それが上司や同僚からのパワハラやモラハラにつながることで、本人の自己肯定感が下がったり、うつ病になったりと二次障害を引き起こすことがあります」
大好きなお子さんが生きづらさを少しでも解消して、将来、社会で独り立ちするため、人生をかけたチャレンジをしてきたという赤平さん。
「その過程で、麻布合格という出来事がありました。結果、私自身が『社会には発達障害の有無にかかわらず凸凹のある人がたくさんいる』ということに気づき、人との向き合い方が変わりました。発達障害の知識と情報を学ぶことは、息子自身の自信や自己肯定感を高めるだけでなく、私にとっても人生の大きな転換点となりました」
赤平さんがトライ&エラーした結果、得られた知見は子どもの可能性を伸ばすだけでなく、社会で生きづらさを感じている大人にとっても大いに参考になるものだろう。