ワクイ音楽事務所 増田峰夫社長(1)ナベプロ大卒1期生で森進一と布施明を担当
目の前で銃声を聞いた殺人事件、芸能界を揺るがす独立騒動、経営者の多額の持ち逃げ……来年、米寿を迎える「ワクイ音楽事務所」社長の増田峰夫氏は背筋をピンと伸ばしたまま、よどみなく激動の半生を語ってくれた。
森進一や布施明らを担当した渡辺プロダクションの大卒1期生である。
「昨年3月にナベプロ同期の和久井保が急逝して、彼の事務所を引き継ぐことになりました。86歳で社長就任ですよ。(芸能事務所の上層部の集う)日本音楽事業者協会の会議にも初めて出席しました。周りは50代中心で、『ウチの親父と同じ年ですね』なんて言われてます(笑い)」
米屋の息子として1935年に東京・江東区に生誕した増田氏には、今も東京大空襲の光景が鮮明に残っている。
「米俵を運ぶ荷車に家財道具を載せて親父の実家の熊谷まで歩いて逃げました。あの日のことはよく覚えています。でも、不思議と小学校までの記憶は空襲以外全くない。終戦で価値観が一変したし、全てを忘れたかったのかもしれません」