阿部慎之助は頭からタオルをかぶり顔を隠して泣いていた
01年の開幕戦。阿部慎之助が巨人の新人捕手としては23年ぶりに開幕スタメンマスクをかぶりました。巨人は前年、日本シリーズでの「ONミレニアム対決」を制し、6年ぶりの日本一を達成。歓喜に沸く中で特に「日本一球団の正捕手や」と喜んだ村田真一さんの誇らしげな表情が印象的でしたが、その村田さんが新人捕手に開幕スタメンの座を奪われたのです。
正直、慎之助に対する風当たりは弱くはありませんでした。入団当初からその打撃には目を見張るセンスとパワーがあったものの、捕手は特殊なポジションです。経験が配球の妙となり、実績が投手陣からの信頼に直結する。当然ですが、新人の慎之助にはまだそれがありませんでした。
投手が打たれて負ければ、マスコミは慎之助のリードを問題にする。慎之助はチーム内でも毎日のようにコーチから注意を受け、先輩選手からも厳しい声が出ました。
僕も言いました。
「長打だけは打たれちゃいけないあの場面で、相手の主軸打者に対してあの内角の球はないんじゃないか」