著者のコラム一覧
田崎健太ノンフィクション作家

1968年、京都市生まれ。ノンフィクション作家。早大卒業後、小学館入社。「週刊ポスト」編集部などを経て、99年末に退社。著書に「W杯に群がる男たち―巨大サッカービジネスの闇 」(新潮文庫)、「偶然完全 勝新太郎伝」(講談社+α文庫)、「真説・長州力 1951-2018」(集英社文庫)、「電通とFIFA」(光文社新書)、「真説・佐山サトル」(集英社インターナショナル)、「ドラガイ」(カンゼン)、「全身芸人」(太田出版)など多数。

<1>「権力の継続こそが腐敗の根源だ」

公開日: 更新日:

 トルコやロシアで監督をやっていた時期に現地を訪れた際、慎重で保守的な性格を垣間見た。

 妻のサンドラが作り置きした食事を解凍して食べる以外は、味が予想できるイタリア料理店にしか行かなかった。食べなれない地元料理には、手を出さないのである。

 ブラジル代表時代の盟友・MFソクラテス(11年に57歳で死去)は、現役時代から母国の反政府運動に加わり、軍事政権批判の演説をブツこともあった。彼と比べるとジーコは、自分の情熱をピッチの中に閉じ込めてしまうタイプだった。そんなジーコが火中の栗を拾いに行くなんて――。想像の埒外だった。

 ジーコは14年シーズンからインドのスーパーリーグ・FCゴアの監督を務めている。インド西側のアラビア海に面した港町でジーコに会った。

「あなたは“サッカー政治”から距離を置いた人間だと思っていた」と切り出すと「そんなことはない」と憤然とした表情で手を大きく広げた。

「おかしなことがあれば昔から発言していた。今回、立候補したのはFIFAを変革するチャンスだと思ったからだよ。ボクは今、62歳だ。サッカー界で40年以上、仕事をしてきた。しかし(前々会長ラウスから)3人の会長しか知らない。ブラッターは会長を何年やっているんだ?(98年に就任) その前のアベランジェは?(74~98年) 権力の継続こそが腐敗の根源だ。そのことをボクはずっと批判してきた」

 そうジーコは熱く語り始めた。

【連載】ジーコが見た「FIFAの病巣」

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