<1>「権力の継続こそが腐敗の根源だ」
トルコやロシアで監督をやっていた時期に現地を訪れた際、慎重で保守的な性格を垣間見た。
妻のサンドラが作り置きした食事を解凍して食べる以外は、味が予想できるイタリア料理店にしか行かなかった。食べなれない地元料理には、手を出さないのである。
ブラジル代表時代の盟友・MFソクラテス(11年に57歳で死去)は、現役時代から母国の反政府運動に加わり、軍事政権批判の演説をブツこともあった。彼と比べるとジーコは、自分の情熱をピッチの中に閉じ込めてしまうタイプだった。そんなジーコが火中の栗を拾いに行くなんて――。想像の埒外だった。
ジーコは14年シーズンからインドのスーパーリーグ・FCゴアの監督を務めている。インド西側のアラビア海に面した港町でジーコに会った。
「あなたは“サッカー政治”から距離を置いた人間だと思っていた」と切り出すと「そんなことはない」と憤然とした表情で手を大きく広げた。
「おかしなことがあれば昔から発言していた。今回、立候補したのはFIFAを変革するチャンスだと思ったからだよ。ボクは今、62歳だ。サッカー界で40年以上、仕事をしてきた。しかし(前々会長ラウスから)3人の会長しか知らない。ブラッターは会長を何年やっているんだ?(98年に就任) その前のアベランジェは?(74~98年) 権力の継続こそが腐敗の根源だ。そのことをボクはずっと批判してきた」
そうジーコは熱く語り始めた。