悩む吉井に野村監督が「ヤクルトを出なさい」と言った真意

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 チームの勝利を目指すのはもちろん、選手の個人タイトルにも理解があった。「個人タイトルは選手の勲章だ」と言っていた。

 この年、僕はシーズン終盤まで防御率のタイトルを争っていた。あと何イニングか投げて無失点に抑えればタイトルに手が届くという位置にいた。すると「せっかくのチャンスやないか」と、わざわざ登板機会をつくってくれた。「ありがとうございます! それなら投げてきます!」と勇んでマウンドに上がったものの、あえなく打ち込まれた。結局、防御率2・99。タイトルを取った広島の大野さんとは0・14差のリーグ4位だった。

 先発して六回につかまったとする。指揮官なら次は傷を負う以前、五回を投げ切って勝利投手の権利を得た段階で代えようと考える。野村監督は違った。僕が六回に打ち込まれると、次の登板は必ずと言っていいくらい七回とか八回まで我慢した。なにくそ、次は抑えてやるという反骨心をあおり、さらに成長させようとしてくれた。

 97年オフ、ヤクルトからニューヨーク・メッツへ移籍。メジャー5年間で32勝(47敗)したことで少しは背中を押してくれた野村監督に恩返しができたと思うし、コーチとして選手の指導に携わるいまも、その教えはヒントになっている。

 突然の訃報に驚いているし、とにかく残念でなりません。ご冥福をお祈りします。

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