(9)波瀾万丈の海外取材 森保日本の今後の軌跡を見守っていきたい
2022年カタールW杯出場権を獲得した日本代表が本大会に向け、新たなスタートを切った26日。日本サッカー協会の田嶋幸三会長や反町康治技術委員長、森保一監督らが揃ってオンライン会見し、悲願のベスト8超えに向けて力強く進んでいくことを再確認した。
選手にとっては熾烈なサバイバルの幕開けだ。森保一監督も4月1日にカタールで行われる抽選会に出席し、渡欧してこれまで代表に呼んでいない奥川雅也(ビーレフェルト)や伊藤洋輝(シュツットガルト)ら新戦力をチェックすると見られる。
その一歩となる29日の最終予選ラストのベトナム戦(埼玉)では、久保建英(マジョルカ)ら若手の一挙手一投足に注目だ。
■国際間往来の少なさを実感
9日間滞在したシドニーも26日午前中にお別れ。早朝にホテルを出て、道に迷いながらレンタカーを返却。シドニー空港のJALのカウンターに向かった。
羽田空港では地上係員が必要書類の確認とチェックインの両方をやっていたが、こちらはまず書類確認担当がPCR陰性証明などを見て、その後にチェックインという二段階方式だった。確かにその方が効率的かつ迅速。すぐに搭乗券をもらい、自動化ゲートで出国検査を終え、中に入った。
出発前のラウンジ滞在は海外取材の楽しみのひとつだが、筆者が持つカードのラウンジはクローズ。周りを見ると閉まっている飲食店も少なくない。
各国の水際対策が緩和されつつあるとはいえ、国際間往来はコロナ前とは比較にならないほど少ないのだろう。ウクライナ情勢も混迷を深めていて、まだまだ不安材料が多い。早く元の世界に戻ればいいと願った。
機内ではブリスベン在住の日本人女性と隣に。水際対策に話が及び「日本入国書類を出発16時間前までにオンラインで登録できるファストトラック制度が羽田で3月1日から始まりましたよね」と言われて目が点になった。
2021年11月のオマーン遠征時は、質問票のみオンライン回答でQRコードを入手。それ以外の誓約書、ワクチン・PCR証明は紙で提示する形だったので変更なしと思いこんでいた。出国準備に忙殺されたこともあり、帰国の方は手薄になり、最新情報確認を怠る失態を犯してしまったのだ。
代表戦勝利の有り難さが身に染みた
同乗していた記者仲間に聞くと「自分も知らなかったが、JALからメールが来て慌ててやった」と苦笑する。筆者は格安航空券サイトで買ったから連絡がなかった。「これは手続きに時間がかかる」と覚悟し、機内で配られた誓約書、質問票、検疫書類を記入した。
一方で、24日の大一番がオーストラリア全土でどう受け止められたか、が気になって隣の女性に尋ねると「試合があったんですか? 知りませんでした」との返事。日本人仲間との会話にも上らなかったという。
やはりオーストラリアのメインスポーツはラグビー。スタジアム・オーストラリアの脇にもニューサウスウェールズ州のラグビー協会の立派な建物を見かけた。両者の人気の差は圧倒的なのだろう。
それに加えて、当日は土砂降り。4万1852人の観衆が入ったのは御の字と言える。ただ、オーストラリアの完敗を目の当たりにしたことで今後、足が遠のくオージーも少なくなさそうだ。しかも彼らはアジア・南米とのプレーオフに挑まなければならない。
序盤の苦戦を考えれば、日本がそちらに回っていた可能性も少なくないだけに、代表戦勝利の有難さが身に染みた。
10時間のフライトを経て羽田空港に到着。必要書類登録未完了の筆者は、戦々恐々としながら出国検査場に向かった。質問票のQRコードチェックから始まり、機内で渡された誓約書、体調に関する質問回答用紙の提示、ワクチン証明確認、抗原定性検査キット受領、唾液検査と流れ作業的に進んでいく。ここまでは2021年11月のオマーン遠征時よりスムーズだ。
歴史的瞬間を目に焼き付けた
続いて「MySOS」の設定チェック。名前やパスポート番号を入力して設定し、専門スタッフに確認してもらう。その後が質問票の提出。すでに質問はオンライン上で答えているのに、なぜ紙を出さないといけないのか、実に不思議。「日本の水際対策は煩雑過ぎる」と外国人から苦言を呈されるのも当然である。
これらが終わるとようやく検査結果を待つロビーに出る。長い待ち時間を覚悟していたが、わずか30分で陰性判定が出て、入国することができた。
飛行機が着陸してここまで1時間半。オマーンの時とほぼ同じだったが、流れ的にはかなりスムーズになった印象だ。が、ファストトラックとそれ以外の所用時間が同じというのは解せない。事前登録しなかった筆者はラッキーだったが、今後は豪州など他国のように迅速な手続き体制を確立してほしい。
こうして波乱万丈のオーストラリア取材は終了。日本代表の歴史的瞬間を目に焼き付けることができ、安堵した。
ここから森保ジャパンがどのような軌跡を辿っていくのか。引き続き、厳しい目で見守っていきたい。(おわり)