C大阪のアジア戦略を牽引する事業部長・猪原尚登氏に聞く「過去・現在・未来」
日本での学びを取り入れた
「(2018年にセレッソでプレーした)チャウワット選手はタイへ帰ってから、日本で学んだやり方を取り入れてタイの選手では珍しい、練習開始1時間前には練習場へ来て筋トレしたり、身体のケアや食べ物を考えたりしていたようなんです。そういった彼自身の頑張りで(2022年3月に)タイ代表にまでなったことを非常に嬉しく思っています」
──2021年に獲得したベトナム代表GKダン・バラム選手の移籍(8月にビンディンFCへ完全移籍)は、個人的にも非常に残念に思いますが、タイ以外の国ではどういった活動をしていくのでしょうか?
「ラムを獲得出来たことで、セレッソ大阪としてベトナムでのフォロワー数がグッと増えたことは、ひとつの大きなポイントだったとは思っています。また18年、19年にテレビ大阪さんと一緒に<ASEAN・DREAM・PROJECT>という企画をさせてもらっていました。タイ、マレーシア、ベトナム、ミャンマーで5人づつ選抜されたメンバーを日本へ連れてきてセレッソ大阪U-15と強化試合をしたり、Jリーグの試合を観戦したり。2年目にはタイとマレーシアでその番組が放送されて反響もありました。コロナ禍の影響もあり、直近ではそういった活動をしていました」
■親会社・ヤンマーとは両輪関係
──アジアへ向けたアプローチ、歩んできた10年というのは(セレッソの)親会社・ヤンマーと非常に密接に進めてこられた印象があります。親会社のイメージ浸透が優先なのか、クラブ利益が優先なのか、それとも両輪が並行しながら稼働しているのか、どんなイメージなのでしょうか?
「両輪ですよね。スポンサーが引っ張っていくだけでは、クラブもついていけない部分もありますし、お互いが補完しながらやっていかないと続かないと思うんです。当初、アジア戦略を始める上でヤンマーさんとの関わりには、我々としても感謝していますし、ヤンマーさんじゃなければ、ここまで進めてこられなかったとも思っています。ヤンマーさんはサッカーとの関わりの歴史がも古く、サッカーを上手く活用したい思いもあるでしょうし、セレッソ大阪が『YANMAR』とプリントされたユニフォームを着てプレーすることでアピールにもなるでしょうし」
■シェアを勝ち得たところまではいってない
「両輪で歩んできた10年だと思っています。ただ両輪で歩んできた10年とはいえ、ヤンマーさんが、タイでの(ビジネス上の)競合から(セレッソにアジア戦略によって)シェアを勝ち得たというところまでは至っていないと思います。そこはまた次の課題として、どうやってビジネスへ繋いでいくか、セレッソがサッカーで繋がったリレーションを継続して役に立っていけるのか、またタイで培ったモデルを他の国へ横展開していけるのか。
我々がコネクションを持つことでパートナー企業さんへのフォローアップが、将来的には出来たら良いなと思っています。ただこういったビジョンを今後継続してやっていくには、我々も稼がなければなりませんし、いままで先行投資してきた芽や実を刈り取っていくフェーズに入ってきていることは今後の課題として認識しているところです」
■セレッソとしての独自性を出していく
──セレッソ同様、アジア戦略に素早く乗り出し、成功を納めてきたクラブに北海道コンサドーレ札幌があります。既に自国で名声を得た代表クラスの選手を獲得して活性化させるやり方は、セレッソとは異なった手法ですが、それでも意識されるものなのでしょうか?
「コンサドーレ札幌さんとも良く話はさせてもらいますよ。先日には、現場で川崎フロンターレさんとも情報交換をさせてもらいましたし。そういった中、いろんな動向は気にはしています。でも独自色は出していかないと、と思うんです。仮にセレッソが東南アジアの代表選手を獲得したとしても、必ず試合に出られるという確約はない訳ですし、その国のスター選手がそういった状況が続くことが良くない場合もありますしね。我々は育成型クラブとして掲げている以上、そこから育っていって代表選手になるようなところにハマるようなやり方が合っているのかなと。まぁ~どんなやり方が良いのかは、これからの10年でまた見えてくる部分なのかも知れませんよね。」
■ACLでBGパトゥムとの夢の組み合わせ
──今後、考えている海外向け企画や展開はありますか?
「先ずはこの2年間でやり切れていなかった部分をもう一度、今の時代に合わせて進めていきたいと思います、その次にもう少し(活動を)拡大していけるような地盤を作っていけたら良いな、とも思っています。またフットボールの部分で言えば、私が10年前にアジア戦略の担当を始めた頃から、提携先であるBGの担当者と『いつかACLで一緒に戦いたいね』と話していたんですが、なかなか叶わずじまいで。
ところがBGは今、毎年ACLbに出場するのが当たり前のようなクラブになりつつあって、今回はベスト8にまで進出しました。我々も出場できるように頑張らないとなと。ただ本当に対戦することになったら、アウェー感を出すのもどうなのかな、なんて感じているところなんで(爆笑)。今の大会方式で行くと準決勝で当たったりしますが、それが私の夢というか、実現すれば良いなとはずっと思っていることです」
──チームは目下リーグ5位(日現在)、来季のACL出場権を狙える位置に付けています。さっそく来季、ACLで夢の組み合わせが実現するかも知れませんね。
「そうなるように我々も頑張ります」