大谷翔平の放出に待ったをかけ、エンゼルスの価値をさらに上げたいオーナーの商魂と手腕
大谷翔平(28)が、文字通り二刀流の活躍で勝利を手繰り寄せた。
日本時間16日、敵地アーリントンでのレンジャーズ戦に「2番・DH」で先発登板。投げては6回を6安打2失点、打っては1本塁打含む2打数1安打2打点。5月16日のオリオールズ戦以来、1か月ぶりの白星となる6勝目(2敗)をマークした。
大谷が、この試合の前までア・リーグ2位の9勝を挙げていた相手のエース右腕イオバルディに投げ勝った。六回を投げ終えたところで99球に達していたため、2-2の同点でマウンドを降りたが、直後の七回に6番モリアックのソロ本塁打で勝ち越し。大谷に勝利投手の権利が転がりこむと、八回の第4打席で、リリーフ左腕バーグから、メジャートップタイとなる22号2ランを放って自らダメを押した。
大谷の投打に渡る活躍もあり、レンジャーズに5ー3で勝利。この4連戦を3勝1敗で勝ち越し、ア・リーグ西地区首位のレ軍とのゲーム差を4.5とした。
その大谷を巡ってフロントの臭い話が飛び込んできた。
いまから約1年前、大谷をトレードで放出しようともくろんだエンゼルスのミナシアンGMに、「ノー」を突き付けたのはアーティ・モレノ・オーナー(76)だったという。
プレーオフ進出はすでに絶望的。FAを取得するまで約1年半ある大谷が最も高く売れるタイミングで、見返りに4、5人の若手有望株を獲得するチャンス。相手はヤンキースともドジャースともメッツともいわれ、トレードは成立寸前までいった。にもかかわらず、モレノ・オーナーがクビを縦に振らなかったのは計算や思惑があったからだ。
「トレード期限を過ぎた8月下旬に発表された球団売却です」と、現地特派員のひとりがこう続ける。
「モレノ・オーナーは03年、ウォルト・ディズニー社から約252億円でエンゼルスを買収。それから約20年間で売却額は史上最高の約4200億円にハネ上がった。球団の価値がここまで高くなった理由のひとつは、二刀流で全米を席巻する大谷の存在です。モレノ・オーナーは球団を売る際、大谷抜きではその価値が下がってしまうとソロバンをはじいたのです」
あくまでも大谷のいるエンゼルスを売りに出すつもりだったというのだ。
投資家を中心に身売り話は順調に進展、マンフレッド・コミッショナーも「(23年の)開幕前には決着する」との見通しを語ったほど。
しかし、モレノ・オーナーは年明けの1月下旬に急きょ、身売りを中止し、23年以降も所有権を保有すると発表。「(売却の)プロセスを経て、我々にはやり残したビジネスがあることが明確になった」と声明を出した。オーナーの突然の“変心”の裏に何があったのか。前出の特派員がこう言う。